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2013.12.02

辣腕記者達、濁世を歩む:黄石斎真報

黄石斎真報 (文芸第三ピース)

 時は19世紀末、清王朝も末期の頃。当時の世間では、石版画による絵入りの新聞が大人気を博していた。真偽の怪しい出来事から西洋の目新しい文物まで、幅広い題材を取り扱った「点石斎画報」である。その人気は多くの追随者を生み出すに至り、王朝が滅んでも様々な画報が人気を呼びつづけた。
 時代はその少しのち、中華民国のはじめごろ。江南の一都市・仙陽で発行されていた黄石斎真報も、そんな画報のひとつだった。中央政治の動乱とも外国の侵略とも縁遠い場所ながら、平穏と停滞の中にも、変化を兆しつつある仙陽の街。
 その都市の中で巻き起こる、迷信とも科学ともつかないような様々な怪事件。曰く、追い剥ぎを働く幽鬼、夜な夜な壁から伸びる腕。そして位牌を集め発電を試みる一団。
 次々と巻き起こる虚実いかさまな事件に。あるいは自ら調査して、あるいは馴染みの警部の依頼で、真っ先に切り込んでいく、黄石斎石印書房の記者達。彼らの活躍は黄石斎真報にて詳らかに。

 しかし、その画報を読む人々には、決して明かされない様々な事実もある。虚実も正邪も明らかならざる時代の中で、黄石斎真報の面々が、解き、そして明かさない真実とは……。

 この題材をこの人が書いたら、そりゃあ面白くないわけがないですよね。そんな風に思っていたら、本当に面白くて一気に最後まで読んでしまいました。

 タイトルを見れば明白な通り、元となる題材は、清末に実在し、14年ほどのあいだ上海で発行された絵入りの新聞・点石斎画報。今で言う娯楽紙大衆紙のような、横帯で「中国版東○ポ」と表現されている、そんな怪しくも楽しい代物です。作中の時代は、点石斎画報が発行されている時代から20年ほど後の中華民国初期の時代。作中でもたびたび、点石斎画報が(編集部の備品として)登場し、登場人物により引用されています。

 なにしろ長い王朝時代が終わりを告げた、と、後の時代からであれば言えるものの、結局のところ中央のほうでは何が起きているのか誰にも良く解らない、と言うような、なんだか曖昧で割り切れない場所と時代が舞台背景。江南にある一都市・仙陽を舞台に巻き起こる様々な怪事件に、地元の画報、つまり地方紙的存在である、黄石斎真報の記者達が取り組む事になる、と言う筋立てなのですが、その事件と言うのも、どこか点石斎画報や、そこで取り扱われる様々な中国古代からの怪異を思わせるものばかり。
 なにしろ第一話のサブタイトルが「位牌発電」と言う時点で、かなりの引っ張り具合。位牌から電気を作り出す(と言うデマが流れた)と言う点石斎画報の記事を下敷きに、どうも隣町に、本当に金を出して位牌を借り集めている集団がいるらしい、と言う話が始まる、と言う案配なのです。

 そんな事件に取り組む黄石斎真報の面々もまた、只者ではないどころではない食わせ物ばかり。
 主に探偵役となる、黄石斎真報の顧問的存在・黒蝙蝠に、いいようにおもちゃにされつつも。先輩の陸亜森ら、彼らのペースに巻き込まれていく主人公、見習い新人の林嵩徳の、活躍というか振り回されぶり(かつ罵倒されっぷり)も、実にテンポよくいきいきとした雰囲気。

 それほど馴染み深いとは言えない時代を背景にしながら、その時代ならではの事件を、そして解決を描き出す連作集。ミステリと言うにはかなり変化球と言う気はしますが、最後まで読み抜いて、はたと膝を打つ一冊であります。

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