ダークニンジャ・オリジン:ニンジャスレイヤー「聖なるヌンチャク」(☆☆☆☆)
ニンジャスレイヤー書籍版、2013年最後の刊行。通算8巻となるのは「聖なるヌンチャク」です。
第二部の開幕となる5巻(「ザイバツ強襲」)に始まり、物語内の時間を前後しつつ描かれて来たキョートでの戦いの物語。この「聖なるヌンチャク」では、これまで他のエピソードでたびたび言及されながら、詳細が語られてこなかった、二つの大事件がメインとなります。
ひとつは三神器の一つ・聖なるヌンチャクについて。そしてもう一つはニンジャスレイヤーがネオサイタマに帰還した真の目的と、その結末について。新たな力を帯びたニンジャスレイヤーに対して、ザイバツの最高幹部グランドマスター達も次々と登場。あるいは挑戦を待ち受けて、あるいは軍団を率いて、ニンジャスレイヤーの前に立ちはだかる事になります。
しかし、この巻の真の主役と言うべきは、ニンジャスレイヤーの宿敵・ダークニンジャです。
この8巻の巻頭のエピソードは、彼ダークニンジャの誕生編。フジオ・タカクラがいかにしてダークニンジャとなったのかを描く、過去の戦いを皮切りに、ソウカイヤを抜け、ザイバツの一員となった彼の、キョートでの暗闘が描かれていく事になります。そして彼の行く道は、ニンジャスレイヤーの戦いと、重大な局面で重なり合う事になるのです。
ダークニンジャは第一部からの宿敵であり、ニンジャスレイヤーからすれば、妻子をその手にかけた直接の仇でもあります。にも関わらず、並み居るニンジャスレイヤーの強敵達の中にあって、決して目立った存在だったとは言えませんでした。それはダークニンジャが何を目的としているのか、その内面について、触れられる事がなかった為でもありました。
しかしその彼の物語は、ここで一気に明らかとなります。古代の(ニンジャの)神話時代にまで遡り、明かされるダークニンジャの真の目的。それは彼自身もまた、ある意味での復讐者である、と言いえるもの。このあたりの下りを読めば、なるほど彼が第二部を通じての、もうひとりの主人公とも言い得る、と首肯できるのではないかと思います。
武器を、手勢を、そして地位を。着々と力を得て、地歩を固めていくダークニンジャ。書籍版も折返しを過ぎ、これから佳境にさしかかる第二部ですが、この巻は彼を主役として読める一冊だと思います。
書き下ろしとなる「システム・オブ・ハバツ・ストラグル」は、庇護者を失ったザイバツ所属のニンジャが主人公となるストーリー。目に見えない権力抗争が渦巻くザイバツ内で、何とか生き延び、かつ出世を望む様を描きます。
さまざまな派閥のザイバツ・ニンジャ達が登場する賑やかさを持ちつつ、第一部の「ア・カインド・オブ・サツバツ・ナイト」を彷彿とさせる、末端の苦悩と悲哀を感じる一編です。
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