ヒットマン2:地獄の釜に、今日を生きる(☆☆☆☆)
闇の騎士バットマンが睥睨する、それでもなお罪に塗れた大都会ゴッサムシティ。
名だたる英雄達が華々しいドラマを繰り広げる夜空の下には。地を這って生きる、善良な、邪悪な、そしてどちらとも言えない人々の、日々の悲喜劇が確かにある。
超人専門のろくでなしの殺し屋トミー・モナハンは、その日悲しみの最中にあった。いくつもの大切なものを失い、深い傷を負い、そろそろ自分にも運が向く頃だと、そう信じ込もうとするほどに。だが戦いの傷癒えぬ彼に、思いもよらぬ陰謀と敵とが襲いかかる。世界最強の一角を占めるヒーローと、史上最悪の街の現実を前に、トミーはただひとりいかにして戦い抜いたのか?
ゴッサムシティの片隅、アイルランド移民の街コルドロン。いつか逃げ出す事を夢見ながら、トミーはこの街で日々を生き抜き続ける。蘇った仇敵を皮切りに、次々と闘う事になる、思いも寄らぬ敵たち。イルカ、ペンギン、果てはサンタクロースとまで闘う羽目になりながら、トミー・モナハンとコルドロンの日々は今日も続いていく……。
前作ヒットマンから数ヶ月、前後編の後編とも言うべきヒットマン2の登場です。
犬溶接マン、と言う、いりょくがばつぐんにも程がある(脇役の)キャラクター名で一気に知名度を獲得したこのシリーズですが、前作を一読した方であれば、この作品が一発ギャグの変人オンパレードではなく…… ええと、変人オンパレードに留まることなく。トミー・モナハンと言う、愛すべき痩せ意地を持った男の、そして彼を取り巻く人々、彼を取り巻く清濁ともに溢れる街を描いた、歯ごたえのあるドラマだと言う事をご理解いただけるはず。
そして後半となるこの巻でも、トミーと仲間達のドラマは健在です。様々な痛手を負ったトミーが自ら立ち上がる姿を、最悪のスラムと言われるコルドロンや、汚職に塗れたゴッサム市警の現実と搦めて描く「ローカルヒーローズ」を始め。仇敵の逆襲に遭ったトミーを助けるため、いよいよ皆さんお待ちかね、犬溶接マンら異色のはみ出しすぎヒーローチーム・セクション8が集結する「エース・オブ・キラーズ」といった骨太の作品群。
かと思うと、このシリーズのもう一つの持ち味である素っ頓狂な展開が全開になった、もうタイトルがすでにオチみたいな「ゾンビナイト・アット・ゴッサム・アクアリウム」、そして「サンタ処刑命令」といった作品も収録。たぶん中身をいろいろ想像されたと思いますけど、その想像でだいたいあってます。あるいはもっとひどいです。
はっきり言い切ってしまうと、犬溶接マン(とセクション8の面々)の出番は本編の中のごくわずかであり、犬溶接マンだけが目当てなのであれば、購入すると失望を覚えるか、と思います。
ただ、前巻を読むか、どこかで作品の紹介に触れて。ヒットマンと言う作品の世界の雰囲気。ヒーロー達が実在する中で、なお抜けられない現実に片足を突っ込んだまま、もがき苦しみ、それなりに楽しんで生きている、そんなトミー達の物語に魅力を感じたのであれば。この2巻、決して期待を裏切らない、と思います。
決して安い一冊ではありませんが、満足の手応えのある一冊だと思います。1巻を読まれた方はぜひ。
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