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2014.04.20

理想対現実、過去対現在、キャプテンvs……:キャプテンアメリカ/ウィンターソルジャー(☆☆☆☆)

 NYの戦いから、はや2年。結集したアベンジャーズのヒーロー達は、それぞれの場所で戦いを、人生を続けていた。
 トニー・スタークがアーマー開発に取り憑かれ、ソーが神々の世界を駆け回っていた頃。キャプテン・アメリカその人、スティーブ・ロジャースもまた、己の戦いを続けていた。
 ただ一人残った仲間、ブラックウィドウと共に、合衆国の秘密組織シールドの一員となったスティーブ。もう戻れない過去の時代に心引かれつつ、現代に適応しようと努力しながら。人知れず平和のため、危険な任務を帯びて世界を駆ける日々を続けていた。

 その日、勃発したシージャック事件を解決するため、キャプテン率いるチームは降下作戦に望む。だがそれは危険な任務だった。奇妙な任務だった。海賊に襲われたその船は、シールドの所有する船舶だったのだ。

 事件が呼び起こす多くの謎。不可解な状況、不審な行動に出るチームメイト。策謀家の指揮官ニック・フューリーもまた、何らかの目的のために暗躍し続ける。
 目に見えぬ敵、分厚い雲で覆われたような状況の中。見えざる敵は、キャプテン達を標的目標としはじめる。追われ襲われ、四方を敵に覆われて。ただひとり、守り続けた祖国の中で、逃亡を余儀なくされるキャプテン・アメリカ。
 誰が敵か、誰が味方か、そして一体誰が無関係なのか。それすらも解らぬ逃亡の中。キャプテン達を追い詰めていく謎の敵の一番手には、金属の腕を持つその男の姿があった。
 過去と未来、理想と現実。そして伝説の暗殺者ウィンターソルジャーと、生ける伝説キャプテンアメリカ、その決着の行方や如何。

 そんなこんなで、見て参りましたキャプテンアメリカ・ウィンターソルジャー。面白かった! 変な言い方ですが、三作目にしてようやく、キャプテン・アメリカ映画ここに実現! と言う感じです。

 それと言うのも。クリス・エヴァンス演じるキャプテンアメリカも、「ファーストアベンジャー」「アベンジャーズ」と来て、これで三本目ではありますが。「ファースト~」は、あくまでキャプテンの登場編としての印象が深く、物語はすべて第二次世界大戦中、過去の世界の物語でありました。
 続いての「アベンジャーズ」は、キャプテンが現代に復帰しての、初めての冒険ではありますが。リーダー格とはいえ、あくまでアベンジャーズのメンバーの一員としての登場であり、キャプテン一人の事情に踏み込んでいっているわけではありませんでした。
 そして、いよいよ三作目にして。「現代を生きるキャプテン・アメリカ」が描かれることになります。ここで描かれるキャプテンの姿は、理想と現実の乖離に、あるいは両立に苦しむ人の姿そのもの。
 シンプル、と言い切ってしまうと語弊があるとは思いますが。馴染み深い、生まれ育った時代ははるかな過去となり。見知らぬ、そして生きにくい現代に、決して望んだわけでもなく、蘇ってしまったスティーブ・ロジャーズの姿が、ここにはあると思うのです。

 そんなキャップを演じるクリス・エヴァンスは、アベンジャーズの時に比べると渋みの増したコスチュームもあるのか、すでに板についてきた、静かな説得力を持った立ち姿。キャプテンのシンボルであるシールド投げも素晴らしい(跳ね返ったシールドで敵を倒すところまでやってくれます)アクションシーンは、超人兵士の肩書きもかくやと言う体さばき。銃に、車に、戦闘機に、あらゆるものに身一つ盾一枚で立ち向かうさまは十二分な迫力。
 また一方で、心強い味方ファルコンの飛行用装備や、シールドの装備、キャプテンを襲う敵たちが繰り出す様々な近未来的な兵器軍など、ミリタリーと言うべきかメカニックと言うべきか、ともかくリアリティ溢れるメカの数々も見逃せません。メカ絡みで作中に登場する大仕掛けは、もうなんていうか変な唸り声が出ます。出ました。

 戦争に志願し、守り抜こうとした、祖国アメリカの自由と正義。彼の意志を継いだ人々が守り抜いた祖国。未来において、同じはずのその国が。まるで違う星のように理解し難いものとなってしたとしても。
 過去を懐かしみ、その僅かな残り香にどうしようもなく心引かれながらも。この「いま」を生きるため、そしていまを守るために。ときに教えを受け、時に悩みを吐露しながら。そしてそれでも、妥協すべきではないものには、過去にそうあったように、決して妥協せず戦おうとする。
 魅力はいろんな方面に突き抜けていて、語ると尽きない割に内容がなかなか語りにくいと言う、なんだかこう紹介しにくいこの作品ではありますが。アメコミ映画としては、今までにあまりやっていなかった切り込み方をしてきた一作ではないかと思います。

 アメリカの理想の象徴、キャプテン・アメリカ。そのキャプテンにとって、最大の、そして永遠の敵とは、いったい何者なのか。そんなことを思いつつ愉しんだ、この一作でありました。

 ……いやもう。老人となってしまった、かつての知人と語り合うシーンとか、ほんともう。アメコミ映画見てるんだよな今、って言う気分でしたよ……。

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