« 太陽と麦酒の日曜。(☆) | トップページ | 5月の読書録(☆) »

2014.05.31

時を駆ける希望 X-MEN:フューチャー&パスト(☆☆☆☆)

リンク: 映画『X-MEN:フューチャー&パスト』オフィシャルサイト 5.30 (Fri.).

 望んだ未来が、こんなものであるはずがなかった。

 2023年、ミュータントは、そして人類は滅亡の危機に瀕していた。世界を支配するのは、無慈悲な殺戮機械センチネル軍団。かつてミュータントを抹殺するため開発されたこのロボット達は、ミュータントのみならず、人間-- ミュータントを生み出す母集団-- をも支配し、世界を暴力で覆っていた。

 プロフェッサーX、そしてX-MEN達は、宿敵マグニートーと共同戦線を構えて抵抗運動を続けていたが、圧倒的な数を持ち、そして自らの能力を柔軟に変化させるセンチネルとの戦いの前に、わずかな生き残りを残すのみとなっていた。
 追い詰められたX-MENは、起死回生の最後の賭けに打って出る。それは時間を超え、過去を変えること-- センチネル誕生のきっかけとなった事件を阻止し、その存在そのものを歴史から抹消すること。
 過去の自分自身に精神だけを飛ばし、起こるはずだった事件を阻止する。危険な使命に名乗りを上げたのは、不死身の肉体と精神を持つ古強者ウルヴァリン。肉体を仲間達の庇護に委ね、彼の精神が辿り着いたのは、50年前の1973年、ベトナム戦争直後のアメリカだった。

 未来のプロフェッサーX、未来のマグニートー。二人に託された使命を果たすためウルヴァリンが探すのは、50年前の二人-- チャールズとエリック。
 かつて最初のX-MEN達とともに、力を合わせて世界の危機を防ぎ、そして異なる未来を思い描き、敵同士と鳴り袂を分かった、若き日の二人。しかし二人はそれぞれに、苦難と挫折に苦しめられていた。

 未来のいまで望みなき戦いを強いられるX-MEN、過去のいまで孤独な戦いを強いられるウルヴァリン。そしてそれぞれの今を戦うチャールズとエリック。過去と未来に遠く響き、いまや迫りつつあるセンチネルの羽音。
 すでに定められた未来を変えることはできないのか、過ぎ去った過去を取り戻す事はできないのか。X-MEN最大最期の大作戦は、すでに始まっている……。

 てなわけで、アメ懇昼の部に首尾良く参加いたしまして。見て参りました「X-MEN:フューチャー&パスト」。いや、これはいい。これはいいです。シリーズに延々と付き合ってきたファンにとっては、とっておきのご褒美と言う感じ。
 これだけシリーズが続いていると、見ていない人はおいてけぼりなんじゃ? と言う心配はあるかと思いますが。一応、直接の前作となる「ファースト・ジェネレーション」は押さえて置かないといけないと思いますけど、そこだけ見ておけば(あとウルヴァリンがどういうキャラクターなのか、と言う予備知識だけ仕入れておけば)、充分ここからでもいけるかと思います。

 さて。X-MENシリーズの映画も長いもので、シリーズ合計でこれでもう七作目になります。ただこれらの作品群、一直線に続いているわけではなく、いくつかのストーリーラインに分かれていて、整理すると三つのラインに分けられます。
 簡単にまとめると、こんなかんじ。

1)本編

「X-MEN」「X-MEN2」「X-MEN:ファイナル・ディシジョン」

 まずは基本となる本編シリーズ。プロフェッサーX率いるミュータントヒーローチームのX-MENと、宿敵マグニートーその他の敵との戦いを描くシリーズ。

2)ウルヴァリン編

「ウルヴァリン:X-MEN ZERO」「ウルヴァリン:SAMURAI」

 続いてこちらは、スピンオフとなるシリーズ。みんな大好きヒュー・ジャックマン演じる人気キャラクター・ウルヴァリンを主人公に据えて、その誕生と過去の戦いを、そして「ファイナル・ディシジョン」ののち、日本でウルヴァリンが挑んだ戦いを描く、外伝的なシリーズ。

3)過去編

「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」

 三つ目のこのラインは、「X-MEN」よりもさらに過去の時代、1960年代が舞台。プロフェッサーXとマグニートー、やがて宿敵となる二人の、出会いと若者の物語。

 で、以上を踏まえた上で。「フューチャー&パスト」はどこに位置するのか、と言うと。なんと、このシリーズ三つすべての続編と言うべき扱いとなります。
 具体的には、物語が始まるのは、ファイナル・ディシジョン(たぶんSAMURAIも)の後、さらに未来となる2023年。この未来編のキャストは、X-MEN本編のキャストをそのまま引き継いでいます。
 そして物語の舞台が、過去、1973年に移ると、今度は「ファースト・ジェネレーション」の俳優が、若き日のXメン達を演じる事になるのです。
 ええとですね、つまりどういうことかと言うと、プロフェッサーXひとりに二人俳優がついて、最初の三部作に出たパトリック・スチュアートが「未来のプロフェッサーX」を、そして「ファースト・ジェネレーション」に出ていたジェームズ・マカヴォイが、若い頃のプロフェッサーXを演じているわけです。なんという豪華編成。

 ちなみにウルヴァリン、「ファースト・ジェネレーション」本編では、一瞬だけ(ほんとに一瞬だけ)ヒュー・ジャックマンの演で出てきており、そのカメオのような演出が「当時のプロフェッサーとすでに面識があった」と言う伏線として、本作にはそのまま生きているわけなんです。なんというフラグ回収ぶり。

 本編は二つの時代の描写を行き来しながら進んでいきます。未来のX-MENたち、ストーム、成長したアイスマンにコロッサス、それに新顔のブリンクやビショップ達。さらには生ける伝説マグニートー。それぞれが能力を縦横に使いこなす強者でありながら、センチネルの猛威に襲われ、徐々に追い詰められていく。
 その一方、過去に飛ばされたウルヴァリンは、思いもかけぬ時代の後遺症に苦しめられ、未だ立ち直れていない、若き日のチャールズ、そしてエリックの姿に。こういうのは自分の柄じゃない、とぼやきながらも、彼らを叱咤し、どれくらいあるか解らない残り時間に-- 未来の仲間達が、命を賭けて稼ぎ出す残り時間に-- 焦りながら。使命を果たすべく奔走する事になります。

 まとまりそうにないので、このあたりで止めておきますけども。急に切り替わる映像演出や、未来編のX-MEN達のスピーディーな戦いぶり(ブリンクの演出とかもうほんとに)など、映像面でも見るところは非常に多く。
 わけても突出している、これだけは絶対に見るべきと思うのは、クイックシルバーことピエトロ。ウルヴァリン達の助っ人として過去で登場する、超高速で行動する能力を持つ青年なのですが。彼の(原作とはうって変わった)キャラクターの付け方と、能力描写のすさまじさは、二見三見の価値はあります。もうほんとピエトロ、終始楽しそうなんですよねずっと……。

 そんなこんなで、お約束のスタッフロール後まで、入念に楽しめました「フューチャー&パスト」。シリーズが好きな人なら必ずや見るべき、あまり詳しくない、と言う人でも、ピエトロのアクションを目当てにだけでも、劇場に脚を運ぶ価値のある一編だと思います。

 すでにいろいろある今年のベストに、下馬評以上に割り込んできた感のあるこちら。ぜひお勧めです。

|

« 太陽と麦酒の日曜。(☆) | トップページ | 5月の読書録(☆) »

映画・テレビ」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 時を駆ける希望 X-MEN:フューチャー&パスト(☆☆☆☆):

« 太陽と麦酒の日曜。(☆) | トップページ | 5月の読書録(☆) »