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2015.12.24

事実はピース、真実はモザイク:本能寺遊戯(☆☆)

本能寺遊戯 (創元推理文庫)

 『必要』なのは事実じゃない、誰かがすでに解き明かした真実でもない。
 誰も知らず、誰もが唸る、予想だにしない正解なのだ!

 この方の本は好きでちくちく読んでおります。
 シリーズものとしては、あの柳生十兵衛が探偵役となり、古今の剣士流派のエピソードを解き明かす「柳生十兵衛秘剣考」があってこれがまた面白いのですが。この人のもう一つの路線に、「時の娘」的な、現代の視点から歴史ミステリを解き明かす…… というか、ああでもないこうでもない、と論じる短編のシリーズがあります。
 デビュー作の「漂流巌流島」がそのスタイルで、歴史上のいろいろな事件を、売れない脚本家とB級映画監督が、ああでもないこうでもない、と居酒屋で資料を付き合わせて意見を戦わせるわけなのですが。その路線につらなる作品が、この本能寺遊戯と書いて「ほんのうじゲーム」。

 主人公は、それぞれ歴史大好き、ただし方向性のてんでばらばらな女子高生三人組。
 精密な検証をむねとする理論派、怒れる正統派歴史ファンのヒメ。派手好きドラマ好き、虚構陰謀論なんでもござれのアサさん、アニメとゲームでニッポン大好き、ロシア人のナスチャ。
 ひょんなことから雑誌の懸賞への挑戦を決意した三人娘。歴史上の様々な事件の、まだ誰も知らない「真相」を…… その、なんというか、ひねり出して、狙うは賞品、大ファンの作家のサイン本を手に入れるのだ!
 本能寺の変の黒幕は誰だったのか? ヤマトタケルの死に隠された真相とは。春日局はなぜ巨大な権力を手にしたのか、そして宇佐八幡神託事件-- 怪僧・道鏡を天皇にすべし、と言う神託はいったいなんだったのか。ボケてみたり突っ込んでみたり、喧々諤々と三人娘それぞれの推理が展開する……

 とはいうものの、この本全体から感じるのは、「歴史の謎解き」と言うよりは、「歴史の謎」の謎解き、と言うべきもの。それはあるいは、伝説が生まれ、育っていく過程の謎解き、と言ってもいいかも知れません。「歴史の謎」と称されるものは、なぜ生まれ、そしてなぜいつまでも世間に伝わっていくのか。そして一人歩きし続ける伝説たちに対して、どう向き合い、どう付き合っていくべきなのか。

 自ら正統派を以て任ずるヒメの怒りは、恐らくは著者の怒りであり、それは…… 女子高生がおしゃべりしながら謎時を行う、と言う…… 作品全体の雰囲気、と言うよりもテクスチャからすると、ちょっとあんこがいっぱい出ちゃってるかな、と言う気は正直します。しかしこの、はみ出ざるを得なかったなにか、たぶん憤りが、非常に唸るし、好みでもあるところなのです。

 とはいうものの。三人組の中でも、伝説や風聞をもっとも嫌うヒメが、(サイン本欲しさに)持てる力を振り絞って『未知の伝説』を開発しようとする表題作「本能寺遊戯」が、連作中でももっとも面白いかな、と自分としては思ってしまいました。
 また掲載四作のうち最後を飾る「女帝大作戦」は、宇佐八幡宮神託事件を題材にした力の入った一作。これもまたお勧めであります。
 表紙の雰囲気から入ってしまうと、あれっと思うところもあるかも知れませんが。はじめ楽しく、やがて圧倒される歴史ミステリ。お勧めでありました。

 ところで作中に出て来る、架空の歴史ものマンガとかがいちいちすごい気になりました。「へいけもの」て。

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