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2016.05.30

スパイダーバース:スパイダーメン・アセンブル!(☆☆☆☆)

スパイダーバース (MARVEL)

 おおむねみんなが知っている、僕らのヒーロー・スパイダーマン。ところでスパイダーマンと一口に言っても、実にいろいろなスパイダーマンがいる。コミックのスパイダーマン、映画のスパイダーマン。ゲームのスパイダーマン、みんな大好き、東映スパイダーマン。レオパルドン!
 実にいろいろなスパイダーマン、一体どれが本物だろう? どの世界のスパイダーマンが本当で、どのスパイダーマンが亜流なのだろう?

 答えはかんたん。すべてが本物。パラレルワールドと言うのがありまして。よく似ているけどどこかが違う、隣り合い存在する、並行世界のひとつひとつに、それぞれ違うスパイダーマンがいるのだ。
 彼らはピーター・パーカーであることもあれば、違う人であることもある。凄まじい力を持つその世界で最強の存在であることもあるし、猿だったり豚だったりすることもある。まあ、実にいろいろだ。
 でも、変わらないこともある。どんな世界でも、どんな姿でも彼らはスパイダーマンだ。ヒーローなのだ。自分達の住む世界を、自分達の世界の隣人を救うために、それぞれがずっと必死に、戦い続けていたのだ。

 たが、それぞれに生きる彼らにいま、見えざる影が襲いくる。前触れもなく世界を超え、「その世界のスパイダーマン」を襲い喰らっていく、吸血鬼じみた存在インヘリターズが、次々とスパイダーマン達を倒していたのだ。
 警告を受けることも身を守ることもできず、一方的に虐殺されていくスパイダーマン達。誰かがピンチに陥ったとき、スパイダーマンはいつも助けに駆けつけた。だがスパイダーマンが絶体絶命の危機のいま、一体彼を誰が救うのか。
 スパイダーマンの危機、それを救うのはスパイダーマンだ。スパイダーマンの中でただひとり、かつてインヘリターズを倒したピーター・パーカーを中心に、多元世界の枠を超え、スパイダーマン達が結集する。未来から来たスパイダーマン2099、異世界のスパイダーガール。イギリスのスパイダーUK。スパイダーグウェンにスパイダーパンク。
 それぞれの世界、それぞれの物語を背負い、次々と戦列に加わる数知れぬスパイダーマン達。並行世界を八艘飛びに、スパイダーマン達の反撃の狼煙が上がる!

 てなわけで。てなわけで。いそいそと買って参りましたスパイダーバース。面白かった……! 面白かったって判ってるけど面白かった!
 いやしかし、このスパイダーバースが連載されていたのは2015年の頭あたり。当時レオパルドンの影響で話題をかっさらったとはいえ、本国での発表からわずか1年半、それくらい最近のストーリーが邦訳されて読めるなんて。嬉しいことですほんとに。
 この「スパイダーバース」シリーズ。邦訳版は今回を皮切りに、全部で三冊刊行の予定なのですが、別にストーリー的に上中下、と言うわけではありません。メインになるストーリーは、今回発売の「スパイダーバース」だけできっちり完結しています。
 じゃあ残り2冊はどんな内容かと言うと、まず「エッジ・オブ・スパイダーバース」は、スパイダーバースから僅かに遡り、スパイダーバースに至るまでの物語。たぶんピーター・パーカーがスパイダーメンに合流するまでの話になるのだと思います。
 ……えー、このピーターは一番有名なピーターで、作中の表現で言うとアース-616(マーヴルコミックで一番メインで扱われてる世界)のピーターということになります。作中でも自分達で突っ込んでますけど、登場人物のほとんどがスパイダーマンでピーター・パーカーですからね。おおよそ九割はスパイダーマンなんじゃないでしょうか。話を戻すと、もう一冊、「ワールド・オブ・スパイダーバース」には、本編の途中でピーター(616)と分かれ、別働隊として行動していたスパイダーマン達の物語が収録されるようです。

 なので、とりあえずどんな話か気になる、と言う場合は、今回の「スパイダーバース」だけでもばっちり完結するので、まずはこれだけでも安心です。その上で、例えば登場人物の因縁だとか、途中で別行動になった人達が、再び合流するまでになにをしていたのか、とかが気になる場合は、残り2冊も買う、と言う感じでいいと思います。というか読んでるとすごい気になりますけども。

 それぞれのスパイダーマンの元ネタ、と言うか出身世界によって描き分けが違って、たとえば日本漫画のスパイダーマンJは、わざわざモノクロでスクリーントーン貼ってるとか、昔のアニメのスパイダーマンはディティールがものすごく大雑把とか、そういう細かな演出の面白さにもニヤリとするのもよしどんだけスパイダーマンいるんだよ! まだ出て来るのかよ! と、ニヤニヤしながら楽しむのもよし。もちろんストーリーは極めて周到で。唸りながら読み込めます。

 わけても今作、スーペリア・スパイダーマンが実に印象深く。過去のある事件で、スパイダーマンであるピーター・パーカーの肉体を、宿敵ドクター・オクトパスの精神が乗っ取っているのが、このスーペリア。ヒーロー側ではあるのですが、言動を見ているといちいち有能だけど悪人ぽいというか、そういうキャラクターなのです。肉体はピーターだけど、中身はオットー、と言う、スパイダーマン達の中でも異分子な彼の姿は、実に印象深く興味深いと思った次第。

 キャラクター紹介に、いつもの解説の小冊子も充実の、このスパイダーバース。
 発売早々大人気のようですけども。なんらかの手段で、ぜひ一読していただければと思います。一生分のスパイダーマンに出会えますよ!

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