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2017.04.23

ミュシャ展:ムハ、歴史を描いた男(☆☆☆)

リンク: ミュシャ展.

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 なりゆきで土曜日は展覧会のはしごをしておりました。二つ目は国立新美術館のミュシャ展。
 最初にアドバイス。チケット売り場がすごい混んでるので、事前にコンビニでチケット買っておくと、びっくりするくらいスムーズに入れます。セブンなら、コピー機で申し込んでレジで払えます。コードは049-880。

 あと音声ガイドは頼んだほうがいいです。スラヴ叙事詩、20枚全部に音声ガイドによる解説がついている。スラヴ叙事詩はものすごく大きいので、離れて見るしかないんですが、音声ガイドを聞きながら、ちょっと離れた場所から見ると、全体を見渡せるし、人混みからもちょっと距離を置けるので。展示パネル周辺だけは混むので、そこは割り切りましょう。

 あと、後半のパリ時代の紹介は、作品がなんていうか普通のサイズなので、普通に混みます。
 もし早く行って並んで見るのなら、後半を先に見て、それからゆっくりスラヴ叙事詩に戻った方がいいかな、とも思います。後半の展示は、若い頃の作品から、スラヴ叙事詩に至るまでの期間の作品がほとんどでもありますし。

 この展示会の主題である「スラヴ叙事詩」。その作者であるアルフォンス・ミュシャを、この展示会ではずっと「ミュシャ(ムハ)」と表記しています。ミュシャはフランス語での発音(に近い音)、ムハはチェコ語での発音(に近い音)。
 フランスでアール・ヌーヴォーの代表者として華々しく活躍した前半生、そして故国のために様々な形で働き、スラヴ民族の歴史を描き記すことに傾注した後半生。展示会の題名がそうであるように、日本ではミュシャ表記が一般的ですが、展示を通じてすべて「ミュシャ(ムハ)」と言う表記を貫いたことが、そのまま、この展示に対する意識を現していると思います。

 スラヴ叙事詩は全20枚、未完成という18枚目も含め、展示替えなどはなくすべてが展示されています。うち4枚はなんと撮影も可能。会場の8割くらいはこのスラヴ叙事詩で、残りでパリでの出世時代の作品から、後半生にデザインした建物や紙幣などの展示が行われてます。ちゃんとジスモンダもありますよ。

 スラヴ叙事詩の作品は一枚一枚が非常に大きいですが、大きさからくるのは圧迫感ではなく、引き込まれるような、門のよゆな雰囲気。そこには不思議な静けさと、どういうことなのか、教えを乞いたくなる空気が。ここに描かれているのが誰で、あるいはいつで。そしてなぜその題材をこう描いたのか、を、考え、知りたくなる感覚があります。
 そこに描いてあることは、実際に起きた事実ではありましょう。描き方や題材の取り方には、描いたムハの意図なり意志が介在し、事実は真実となり、真実は歴史となって描かれます。

 たとえば戦争の歴史で描かれるのは、戦場の風景ではなく、屍と武器が延々と転がる戦後の荒野であり、ヤン・フスが説教を行う教会で、群衆の中でフスは印象的に、しかしあまりに小さく描かれています。むしろフスその人よりも、フスのためにどれだけ多くの人が、どれだけ多くの人が集まっていたかを語りたいように。
 そこには、自分の民族の歴史を一度、すべてを通した一編の物語にしたい、と言う意志をたしかに感じます。この連作で、歴史は一回とりまとめられる。未来の子供達が、この絵を見て、この絵に問いかけながら、歴史を学ぶ姿を思い描いたのかも知れません。
 なにか知っているかと言われたら、何も知らないに等しい、異国の、それも異教徒の人間が、これだけものを思わされる。それこそが、チェコの国外に持ち出されることが決してなかった作品の強烈な意味なのでしょう。

 決して見る人を圧倒する、攻撃するような作品ではありませんが、それでもそこに込められたなにかを思えば、神妙になる。ならざるを得ない。そんな展示会でありました。

 この展示のあと、もう一回見ようと思ったら、たぶんチェコまで行くしかなくなるだろうこの作品。
 機会があったらもう一回くらいは見に行きたいですねー。

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コメント

ミュシャ展、ご堪能されたようで何よりです。

私も昔からミュシャが好きで、今回のミュシャ展も是非観に行きたいと思っております。
後半と前半のサイズの違いはアレですかね、依頼された仕事内容、当時のミュシャ自身の境遇なども反映されているのでしょうかね?
そう考えると、また違った形で楽しめそうですね。
何にせよ、私も近いうちに観に行きますので、チケット購入法はとても参考になりました☆

投稿: CAMUS | 2017.04.24 13:24

 コメントありがとうございますー。ほんとこれを逃したら一生見られないかと思って見に行きました。
 前半と後半って言うのはすいません、誤解させてしまったら申し訳ないですが、純粋に展示の前半と後半と言う意味で、前半の展示はぜんぶスラヴ叙事詩なので、すごく大きい、とそういう意味です。
 とは言いつつも、ミュシャその人の、それこそ前半生と後半生の画風の変化も解説のコメントについていたので、その点も注目だと思います。

 ぜひご覧になって、感想をお聞かせください。参考になればなによりですー。

投稿: sn@散財 | 2017.04.26 22:24

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