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2017.04.18

「キリスト教」の前のストレッチ:はじめて読む聖書(☆)

はじめて読む聖書 (新潮新書)

 美術鑑賞には聖書の知識が、まああったほうが面白い。と考えて。聖書そのものを読まずに、読んだみたいな気になれないかなどとバーナード嬢みたいなことを考えていたら、案の定けっこうな天罰が下りました。つまり、うっかり手を出したのが本書だったと言うわけです。
 まあほら。タイトルだけ見たら、いかにもこれから聖書を読む人向けのガイドブックみたいに見えるじゃないですか。インプレスいますぐわかるみたいな系列の本だと思ってうかつに開いたら、そういうのではありませんでした……。

 そもそもがこちらの本、雑誌の連載をまとめたもの。季刊紙「考える人」の特集をまとめた本…… と聞くと、それだけでかなり身構えますが。文学、哲学、それにもちろん聖書学といった世界の人々それぞれの、聖書との取り組みをまとめた一冊となります。
 一章ごとに別々の著者が、別々のテーマに向けて書いているのですが、どれひとつとっても「自分がキリスト教と思っているなにか」の色々な思い込みを、様々な方向から、いやそれ以外の見方もある、と、ぐりぐりと折り曲げていきます。
 曰く、ユダヤ教では神様は現在留守にしている。曰く、偶像崇拝の禁止とは、すなわち神を人間に擬して語ることを、神の擬人化を禁じていたのではないか。曰く、神学と聖書学の、それぞれ聖書を研究しながらも、相容れることのない立場の違いについて。

 この本の大部を占めるのは、聖書学者・田川建三のインタビュー記事。これがまた、なんていうかものすごく面白意。無神論者のクリスチャン、と言う、聞き返さずにはおれない氏の立場から、聖書学のダイナミックすぎる世界と、これまで辿ってきた、無責任な言い方ですが、面白過ぎる半生が、もうこの、何の本を読んでたか分からなくなる面白さ。
 国際基督教大学での学生運動で矢表に立った(しかも学校側として)かと思えば、フランス語ができないのに、フランスの大学に教授になるために留学する。さらにはアフリカの大学に赴任して聖書学を講義したり。驚きの人生を、思想に結実させている。この一章のためだけでも、購入して損しない一冊だと思います。

 そして巻末の一章はまるまる参考文献。これもまた、この本を読んだ後だと、どれも魅力的で。
 最初の目的とはちょっとずれちゃったので、美術のための聖書再入門はそっちのリストでもう一度。そんな気分になった一冊でありました。

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