ヒットマン3~5:終わりなき乱痴気の終わり(☆☆☆)
闇の騎士バットマンが君臨するゴッサムシティ、しかし夜空も見えない路地裏には色々なものが蠢いている。人間もそうでないものも。
一流の殺し屋にして図抜けたボンクラなトミー・モナハンが生きるのは、そんなゴッサムの片隅。
最低の稼業、最高の仲間、相棒のナットをはじめ、殺し屋稼業の仲間達と立ち向かうのは、ギャング、恐竜、サンタ、独裁者、異次元からやってきたなんだかよくわからないものその他もろもろ。
阿鼻叫喚の馬鹿騒ぎを、あるときは引き起こし、ある時は巻き込まれて。ときに銃弾と暴力を無鉄砲に撒き散らし、ときにお気に入りの場所で仲間達と馬鹿話に興じて、今日その日を生きるトミー達。
けれど、終わらない乱痴気騒ぎの最中、静かに隙間風は吹き始める。いつまでも今日は続かない。最低で最高の日々も。あるいは過去に襲われ、あるいは過去を想いながら、トミー達の生きる今日は、取り戻せないほどに変わっていく。
明日を知らず、昨日に追われて、トミー・モナハンは今日と言う日を、全力疾走で生きつづける……。
てなわけで、間が開いたから、と言うこともあるんでしょうけども。既刊の2巻までに比べて、一気に読破した後半3冊で感じたのは、寂しさ。寂寥感。何かすばらしいものが、静かに音もなく終わっていくような、そんななんとも言えない感慨がありました。
トミーはアウトローで、おおむね雑だし引き金は軽いし衝動的にわりとダメなことをするタイプですが、義侠とも言える片意地を持っていて、それを正当化できてもしようともしない。そんなアウトローな彼の姿をきっちり書ききった、ヒーローの世界を使って、ちょっと違う世界を描き出して見せた作品ではないかな、と思います。
そんな本筋がきちっと通っているからこそ、トミーとスーパーマンがひょんなことから出会うような、ちょっとした物語の広がりが、とても魅力的に映るのだと思います。ちゃんとさん付けにするトミーがかわいい。
話も絵も万人向けとは申しません。しかしどこかで、手に取る機会があったら。どこからでもいい、ぜひじっくりと、台詞回しを楽しみながら読んで欲しい。そんな風に思う作品です。
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