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2017.07.27

深海2017:光ささぬ淵に光はなつ命。(☆☆☆)

リンク: 深海2017-DEEP OCEAN-.

 まったくのたまたまなんですが。生物を身体構造、デザインから論じる「ウニはすごい バッタもすごい」を読んでいる最中、同時進行で深海2017を見て参りました。
 ダイオウイカの出現が陸続としてニュースとなり、科博で深海展が開催されたのは4年前の2013年。前回の展示会ももちろんほくほく満足して見てきたわけで。質量ともにアップグレードされた今回の展覧会も、大いに楽しみにして見て参りました。

 夏休みの開催とあって、展示の解説や全体図などはふりがな多めですが、展示の気合の入り方は置いてけぼり気味なまでに本物。
 展示は大きく二つに分かれています。前半は生物の時間。主に深海の生物たちについて。そして後半は地理の時間。今日の深海探査の技術と機器について、そして近年の探査で判ってきた深海の姿について、最新の成果がまとめられています。

 さて、前半戦の生物のお時間。主に実際の生物の標本または模型と、その生物の活動を捕らえた映像、そして解説のパネルと言う組み合わせで進んでいきます。
 最初のブロックは発光生物。そもそも日光の届かないのが深海で、そういう言い方では一般のイメージ通り、闇の世界ではあるのですが、深海では発光する生物はことのほか多く、そしてそのわずかな光を捕らえるためにこそ目もまた発達しています。我々が想像するような、判りやすくグロテスクな深海生物は、おおむね目や口が異様に大きいものですが。目が大きいのは光を捕らえるためであり、そしてそれは、闇の深海にかすかな光があることを示しているわけです。
 光る深海魚のオーソリティと言うべきチョウチンアンコウ(もちろん標本がありました)を皮切りに、クラゲありイカあり、様々な光る生物のオンパレード。その光る目的も実に様々で、餌を釣るために光るもの、身を守るために光るもの。さらには、救援を呼ぶために光るもの…… 自らを狙う捕食者を、さらに狙う上位捕食者を呼び寄せるために光を放つものまで、その目的は実に様々。
 光ったら目立つから狙われるんじゃないの、と言う意見は実にもっともなのですが、深度によっては、光ることで身を守ることもできます。魚が泳げば影が出来る。日光を遮る影を察して、捕食者は餌の存在を感じ取り、直上へと襲いかかる。
 ならば身を守るためにはどうすればいいか、影を落とさなければいいのです。つまり、腹側から光を出せば、影を防ぐことが出来る。ナチュラルボーン光学迷彩、カウンターイルミネーションです。
 このカウンターイルミネーションを見破るために捕食者も独自の進化を遂げており、その一角が、今回の展示会で猛プッシュを受けている、深海の新生デメギニス。頭の上半分が透明なドームになっていて、巨大な目で真上を見られると言う、どうしてこうなったんだとしか言いようのない生き物です。

 そもそも発光物質は体内で合成できないのでは、と言う興味深い議論をちょいちょい挟みつつ、前半戦は発光生物、そして海中で巨大化する生物、とりわけ南極海の周囲を巡る海流と、その内側で反映する巨大な生物たちの姿が次々と目の前に現れます。
 とにかく普通の生き物が、なんでどうして、と思うくらい巨大化しております。普通サイズの類似の生物と並べて展示されており、落差がまあすごい。

 氷河期に人知れず危機に陥っていた、日本海の深海生物の栄枯盛衰を挟んで、展示は後半へ。
 4年前の展示を見に行った時と、今年展示を見に行った、ここ数年のあいだで。一番自分の中で変わったことは、海洋研究開発機構、JAMSTECの一般公開を見に行くようになっていたこと。そしてそのJAMSTECこそ日本の深海調査の総本山であり、今回の展示でもJAMSTEC所有の色々なものが展示されております。
 具体的には、入ってすぐのところにある、「水圧でこんくらいものがつぶれますよ」って例で展示されていた、様々な水圧で圧縮されたブタメンの空き容器。同じ個体なのか別個体なのかは判りませんが、あのブタメンの空き容器、JAMSTECの一般公開で何回か見たことある。

 津波のメカニズムに、過去の災害が海底に残した痕跡。そして2011年の東日本大震災、この大災害が海底にもたらした変化と、海底8000m地底1000mの海底に地震の痕跡を求める、JAMSTECの探査船「ちきゅう」の海底探査ミッションの模様が紹介されます。
 この「ちきゅう」と言う船がまたとんでもない代物で、言わば地球に注射針を突き刺す、注射器のごときもの。船体上部に巨大な櫓を構え、一本27mのパイプを、リニアに縦にそりゃもう大量につなげることで、海をブチ抜き海底をブチ抜き、地底に突き刺したドリルから、地層のサンプルをごっそり引っこ抜きます。
 人間にとっては丸太より太いパイプですが、地球にしてみれば髪の毛よりも細い注射針のようなもの。これを地層に突き刺して、海底の地層をそのまま引き抜くことで、組成、温度、どこでズレが発生したかまで、そのまま保存して地上まで持ち帰ることができるわけです。
 東日本大震災のメカニズムを解明するための、海底探査のミッションの様子が後半の重点。海底に眠る資源、鉱物、燃料、そして生物。その利用の可能性と問題点を指摘しながら、海底探査の未来を解いて後半の締めくくりとなります。

 人類史上、宇宙へ、月へ到達した人類はのべ12人(※散財調べ)。
 一方、地球最深遠、チャレンジャー海淵へ潜った人間はわずか3人。そのうちの一人がジェームズ・キャメロンと聞いて、なにしてんですか監督と言う気持ちでいっぱいなのですが。
 身近と言うのはあまりにも遠いけれど、空想が飛び交い尽くした空よりも見知らぬ世界が、足下に、見知らぬ海に広がっている。世界には判っていない真実があまりにもいっぱいあって、これから世に現れる誰も知らぬ誰かに、見いだされ、世に明らかにされる日を静かに待っている。そんな風に思うと。
 そこここの子供達の食いつきぶりに、期待の笑みが忍ぶ。そんな感慨を抱いた、アップデート深海展でありました。

 ちなみに「ウニはすごい バッタもすごい」はこれはまた図抜けて興味深い一冊なので、読了したらまた改めて紹介します。サンゴってすごいのね。

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