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2017.09.30

探偵道長、みやこを駆ける。妖曲羅生門(☆☆☆)

妖曲羅生門~御堂関白陰陽記~

 この世をば我が世とぞ思う望月の、と、誰しもが一度は憶えたあの人物が、この物語の主人公。
 千年の昔、時も所も平安京。娘を次々と天皇の后とし、位人臣栄華を極める御堂関白・藤原道長。が、いずれそうなる未来も、誰も知るよしもない。二十歳そこそこの有力貴族の末っ子だった頃の事。
 気の趣くまま興味の向くまま、あるときは京を騒がす怪事件に手を伸ばし、あるときは過去の-- そう、彼らの生きていた時代よりもさらに過去の-- 人々の事績について、その実際を探り訪ねる。
 気の合う兄の道綱に、馴染みの武家の源頼光、その配下の四天王達に、知恵袋格の安倍晴明。多くの仲間達と共に。物語と歴史、虚と実の入り交じるその真相を探し求めて、若き道長は溢れる才気を迸らせる……。

 というような盛り上がりぶりで。高井忍の新刊、妖曲羅生門を読了しました。この人の本大好きなのです。
 デビュー作の「漂流巌流島」からこちら、歴史上の著名な事件や人物について。世に知られた通説・伝説を解体・再検証し、記録史料と照合して新たな姿を再構築する、と言うのが主なスタイルなのですが(そしてその探偵役が現代人のケースと同時代人のケースがあるのですが)、今回もそのスタイル。舞台は平安時代、そして道長と道綱の兄弟を探偵役として、短中編5作の連作となります。

 読み終えて調べるまで知りませんでしたが、題材に取り上げられているのは、能の演目、つまり謡曲。
 鉄輪、平蜘蛛、小鍛冶、草子洗、そして羅生門の五章が、それぞれ同時代、あるいは近い過去に起きた事件として、道長たちの目の前に現れ、そしてそこにまた別の著名の挿話が挟まれながら、五つのミステリとして立ち現れてくるのです。
 自分は能にも平安時代の逸話にもほとんどまったく知識がなく、安倍清明と源頼光と藤原道長が同時代人と知っただけで、へえー!と思う程度の知識しかなかったのですが。それでも平安オールスターな豪華な登場人物達が、軽やかに謎を繋いでいく様は、大変満足させていただきました。

 5本どれも面白いのですが、一番はどれかと聞かれたら「草子洗」でしょうか。道長達の時代からしても過去の人物となる、小野小町の逸話を巡る短編。
 この作者の作品を、全部とは言わないまでもそれなりに読んでいた身としては、だいぶ手に汗握りながら読んでおりました。

 そんなわけで、時代や題材に予備知識がある人ならきっとすごく楽しいに違いない、それほど知識のない自分でも十二分に楽しかった連作でありました。ご興味がありましたらぜひ。

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