かくも賑やかな終末:マイティ・ソー バトルロイヤル(☆☆☆☆)
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かつてアベンジャーズの一翼を担い、世界を救った雷神ソー。彼はいつしか地球を去り、はるか宇宙で自らの戦いを続けていた。ひさびさの帰還を果たした故郷アスガルド、そこで気付いた異変から、ソーは突如、予期せぬ戦いへと飛び込んでいくことになる。
敵として干戈を交えた弟ロキ、アスガルドの女戦士ヴァルキリー、そして世界から姿を消した超人ハルク。敵か味方か、今一つ意図の噛み合わない面々を巻き込みながら、故郷のため人々のため、ただひたすら一途に走り続ける雷神ソー。予め定められた終末に、死の女神に抗い戦う、英雄神の姿を見よ!
てなわけで、見て参りました。単独ではシリーズ三作目となるマイティ・ソー バトルロイヤル、原題ラグナロク。ラグナロクというのは、まあもう有名な話ではありますが。おおざっぱに言えば北欧神話における世界の終末のこと。巨人と神々の最終決戦の末、世界も神々も(一旦)滅び去る、と言う、壮大な物語、壮大な神話です。
そのラグナロクを副題に頂いた今回の物語はといえば。なんと雰囲気はまるっきりコメディ。ときにシニカルに、ときにべったべたに。これまでのシリーズでのあれこれも押さえて、あの手この手でつぎつぎ笑わせに仕掛けてきます。
ことに会話。ソー、ロキ、ハルク、お世辞にもこれまでいろいろとあった敵味方三人、それぞれの会話がもう妙味。もう中盤に入ったあたりで、ああこれくるな、と思ったら、やっぱりやった! やりやがった! と、ニヤニヤしたりしまいに吹き出したり。映画館で声出して笑ったの久しぶりでありました。
しかしながら、この映画がじゃあ、コメディ映画とくくることが出来るかと言うと、なかなかそう言い切るのは難しい。ゆかいな喜劇でありながら、まぎれもない悲劇でもある。悲喜劇と言う言い方が合っているかは判りませんが、そういう物語です。
ストーリーは、つまり登場人物が直面する事態はあくまで深刻であり、登場人物達も(一部怪しい人はいますが)眼前の状況に真剣です。ソーも、ハルクも、そしてロキもまたロキなりに。彼らは作中において真剣なのです。
眼前の状況に、最善を尽くそうと試みるがゆえに。あるいは説得するために、または状況を改善するために取った必死の行動。それ自体が笑いをさそう突飛なものであることもあれば、その行動が、予期せぬ、もしくは予期し得た、笑うしかない結果を引き起こすこともある。だからこそ可笑しく、だからこそ見入る。
わけてもソーは格別に真剣です。CMや予告編を見た方は御存知だとは思いますが、作中でソーが見舞われるのは、アイデンティティに関わりかねない挫折。
そこに終わらぬさらなる挫折、喪失に苦しみながらも。ぶれることなく、故郷のため、人々のために戦おうとし続けます。それは過去作を経て成長し、ヒーローとなった雷神の姿。
その真剣さが物語を登場人物達を引っ張り、その真剣さがたまらないおかしさを生み、そしてその真剣さが、悲劇をかきたてるのです。
これまでの二作もそれぞれカラーの違う作品ではありましたが、びっくりするほど違う方へと舵を切ったこのバトルロイヤル。
楽しく、悲しく、英雄譚と言うに相応しい一作。アベンジャーズ、エイジ・オブ・ウルトロンを見ていれば楽しめると思います。極彩色の終末を、ぜひ映画館で。
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