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2018.08.19

予言した者、された者、今この時を見ざる者:メタルマクベスdisk1(☆☆☆)

リンク: 『メタルマクベス』disc1|TBSテレビ:IHI STAGE AROUND TOKYO.

Dsc_9860

 一枚のCDを作ってから、彼らの運命は狂った。
 そして一枚のCDを授かったがために、より多くの運命が狂った。


 現代文明が脆くも崩れた2218年の未来。かつての東京を席巻する新興勢力・ESP国。その覇道を支えるのは、連戦連勝、無敵の将軍ランダムスター。盟友エクスプローラーとともに遠征の帰途にあった彼は、道に迷った末、謎めいた(ゴスロリめいた)三人の魔女と出会う。
 ランダムスターをマクベスと呼び、彼のものではない土地の領主と讃えた魔女達は、彼が将来王となることを告げ、予言が秘められていると言う一枚のCDに手渡す。
 アルバムの名は「メタルマクベス」。そしてそのジャケットには、ランダムスター、エクスプローラー、そしてESP国の重臣グレコと瓜二つの男達が映っていた……。

 1981年。ジャパニーズ・メタルが隆盛を迎えようとしている頃。1stアルバム「メタルマクベス」をリリースしたヘヴィメタルバンド・メタルマクベス。しかしそのリーダー、マクベス橋本は焦っていた。苦しんでいた。
 無軌道なメンバー。無理解な事務所。さらに無理解なマネージャー。それらすべてを断ち切る切り札は、裏切ると言う選択肢。

 200年後の、そして自分たちの運命を予言した楽曲「メタルマクベス」。それを生み出した男マクベス橋本。
 そして200年以上前に遺された楽曲を、己へのメッセージと受け取った男ランダムスター。
 ひとりの男が演じる、ふたりの男が、野心を抱き、野心を疑い、野心を遂げ、そして、野心がために滅びゆく。予言した者と予言された者、そして彼らの愛する者。すべてを巻き込み噛み砕きながら、予言と言う機械は、無情に針を進めていく……。

 てなわけで。てなわけで。いろいろあってお声掛け頂き、見て参りました、劇団新感線・メタルマクベス。
 なにぶん観劇経験そのものがニュービーで、劇団新感線の舞台を見たのもこれで二回目(一回目は修羅天魔でこれまがたもう。もう)。その両方がIHIステージアラウンド東京と言う、偏っているにもほどがある、僕プロレスはDDTと道頓堀プロレスしか見た事がないんですが一種相通じるものがあるんじゃないかなこれ。ないのかな。よくわかりませんが、とにかく私的に滅多にない機会で! これがもう楽しかった! ということなのです。それが言いたいのです。

 修羅天魔のときにも、あまりの工夫と面白さに存分以上に打ちのめされましたが…… このことを話すと長くなるんですが、天海祐希さんがゆっくりと舞台を一周するシーンの静謐さなんかもう…… ともかく、客席が360度回転する、と言う劇場そのものの大仕掛けのお陰で、映画のようにさまざまな場面転換が行われるのがダイナミックなところ。緞帳が下りて客席が回転すれば、そこはもう今までとは違う舞台、違う場面。つまりセットがぐるりと組んであるので、客席のほうが回転して正面が変われば舞台が変わる、と言う寸法で。おまけに降りた緞帳の前に役者さんが出て、芝居が続いているうちに奥の場面がぐるりと転換している、と言う、えッいつの間に、と言う驚きの趣向。おまけに今回は、舞台の半分が、なんというかポストアポカリプスと言うか、北斗の拳みたいな世界観なもので。主人公のランディことランダムスターをはじめ、みんなバイクに乗って出て来る上に、舞台の上を走り回る! バイクで! 縦横無尽に! そのまま殺陣もすれば場面転換もする、と言う寸法で。ギミックそのものが面白いのに、ギミックの存在を消してしまうほど、お話の組み立てが面白く。1幕2幕あわせて4時間前後と言う長丁場にもかかわらず、見入って引き込まれてずっとおおおおと見ておりました。

 大胆な世界観のアレンジにもかかわらず、筋運びはかなりの部分、原典となるシェイクスピアの「マクベス」に沿って進みます。しかしそこに刺し挟まる大きな変更は、原典でも魔女達が語った「予言」、マクベスがいずれ王となる、と言う予言に、その「予言」が世に生まれたパート、作中の時間軸どころか現代の時間軸でも大きな過去となる、1980年代のパートが加わっていることでしょう。
 いずれ予言として解釈され、多くの人々の運命を狂わせる「メタルマクベス」。しかし、そのアルバムは彼らの最初の、そして最後のアルバムであることが、冒頭で観客達に提示されます。ならば彼らはどのような運命を辿り、そして、そもそも、なぜ彼らはメタルマクベスだったのでしょうか?

 帰ってきて、つらつらと考えるに。生じた問いは多く、しかしその問いの多く生じることそのものが、自分がこの演劇を楽しく、そして真剣に鑑賞できたということの現れなのだと思います。もうつまりすごいんですよ! ぐるぐる回るしドラムとべースがどっかんどっかん来るし、せり出しで出て来るでかい液晶をバックに、主演が殺陣を演じながら歌うし、しかも歌詞が後ろの画面に表示される親切設計なんですよこれが!

 てなわけでまあ。珍しく観劇に行ったりしたもので、テンションがすこぶるなことになりまして。楽しかった! てなことを書いておかなくては。と言う気分になった、そんな日記でありました。濱田めぐみさんのマクベス夫人が本当にもうものすごかったって書きたかったんですが、うまくつながらなかったので、ここで。

 僕が見に行ったdisk1は8月末までで、もうチケットも販売終了だと思うのですが、キャストを変えてお送りするdisk2、disk3が、このあと控えております。あっと言う間に溶けていく四時間。ご興味あるかた、ぜひ。

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